【ニュースがわかる!】元銀行員が教える「GDP」の正体。なぜ数字が増えても給料は上がらない!?

お金の知識

何気なく眺めていたニュース番組で、キャスターが「今年のGDPは……」と難しい話を始めた場面を思い返してみてください。

「自分には関係ない」「難しい話はよく分からない」と、チャンネルを変えたくなるかもしれません。かく言う元銀行員の私ですら、当時はどこか遠くの「1つの数字」としてしか見ていませんでした。

しかし、子供が生まれ、親としての自覚が芽生える中で、日本社会のあり方や経済の現状に、本当の意味で向き合う必要性を強く感じ、学び直しを始めました。

経済指標を知ることは、単なるお勉強ではありません。 メディアの煽りや他人の意見に流されず、自分自身で「ゆとりある人生」を手に入れるための、最低限必要な「護身術」なのです。

今回はその第1弾として、誰もが一度は聞いたことがある「GDP」の正体を、どこよりも噛み砕いてお伝えします。

1.GDPとは、「日本というお店の利益の合計」

「GDP」とは「Gross Domestic Product」の略称であり、日本語では「国内総生産」と呼ばれます。 参考書を開くと、「1年間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額を示す経済指標」なんて難しく書かれていますが、これではいまいちピンと来ませんよね。

そこで、まずは「付加価値」=「儲け(利益)」だと考えてみてください。 「利益」は、商品が売れた価格(売上)から、商品を用意するためにかかった費用(仕入)を引いて手元に残る金額です。

【売上 – 仕入 = 利益(付加価値)】

つまり、GDPとは「1年間に日本国内で新しく生み出された『儲け』の合計」のことです。

では、なぜ「売上」の合計ではなく、わざわざ「利益」に注目するのでしょうか? その理由は、単純に売上を足していくだけだと、ある「大きな勘違い」が起きてしまうからです。パン屋さんを例に、その仕組みを紐解いてみましょう。

2.パン屋さんの例でわかる「二重カウント」の罠

GDPを正しく理解するために、登場人物を「小麦農家」と「パン屋さん」で考えてみましょう。

  1. 小麦農家 :小麦を育てて、パン屋さんに50円で売りました。(売上:50円)
  2. パン屋さん:その小麦を使い、パンを焼いてお客さんに150円で売りました。(売上:150円)

ここで、2人の売上を単純に足してみると、合計は200円になりますが、これを日本のGDP(儲けの合計)だと言うと、おかしなことが起こります。

なぜなら、パン屋さんの売上150円の中には、すでに農家に支払った「小麦代50円」が含まれているからです。もし200円を合計として数えてしまうと、最初の50円分を二重カウントしてしまうことになるのです。

そこでGDPでは、それぞれが「新しく生み出した価値」だけを計算します。

  • 小麦農家 :何もないところから、50円の価値がある小麦を作った。 → 生み出した価値:50円
  • パン屋さん:50円の小麦を使って、150円のパンを作った。 → 生み出した価値:100円(150円 – 50円)

この2つの「新しく生み出した価値」を足すと、50円 + 100円 = 150円 となります。 これこそが、この小さな世界で新しく生まれた価値の合計(GDP)です。

ちなみに、この150円という数字、よく見ると「最終的にお客さんが支払ったパンの値段」と同じですよね。つまり、日本中のGDPを足すということは、私たちが1年間で手にした「最終的な商品やサービスの総額」を計算していることにもなるのです。

3.生み出された「儲け」はどこへ行く?

パン屋さんの例で、新しく100円の価値(儲け)が生まれたお話をしました。では、この100円はどこへ行くのでしょうか?

答えはシンプルです。 そのパンを作るために働いた人の「給料」になったり、お店の設備を新しくするための「原資」になったりします。

つまり、「生み出された価値」は、巡り巡って必ず「誰かの所得(分配)」になるというわけです。
さらに言えば、この150円(パンの代金)は元々、お客さんがパンを買うために支払った『支出』から来ています。

  1. 生産:価値を生み出す
  2. 支出:誰かがお金を使う
  3. 分配:誰かの所得になる

これら3つの側面は、どの角度から計算しても最終的に同じ金額になるため、経済学ではこれを「三面等価の原則」と呼びます。

私も銀行員時代に、この言葉を初めて聞いた時は「なんだか難しい表現だな」と感じましたが、要は「お金の流れをどこから見るか」というだけの話です。

4.ニュースで聞く「名目」と「実質」の違いとは?

それでは、ニュースで「GDPが過去最高を更新!」という話がある一方で、私たちの生活に「ゆとり」が全く感じられないのはなぜでしょうか?

それはすなわち、「物価の変動」が隠れているからです。「GDP」には、2つの種類が存在します。

  • 名目GDP:その時の価格で計算した合計。インフレで物の値段が上がれば、中身が変わらなくても数字は増えます。
  • 実質GDP:物価の影響を取り除き、「実際にどれだけ多くのモノやサービスを新たに生み出したか」という「量」に注目した数字。

ここで、リンゴを例に説明してみましょう。

  • 去年: 100円のリンゴが10個売れた。名目GDPは1,000円
  • 今年: 200円のリンゴが10個売れた。名目GDPは2,000円

名目GDPだけ見ると「2倍の成長」に見えますが、実際に私たちが食べられるリンゴの数は10個で変わっていません。物価の影響を排除した実質GDPで見ると「成長率0%」となり、私たちの生活に「ゆとり」が生まれたとは感じないのです。

このように、 ニュースで「GDPが増えた」と聞いても、それが「単に物の値段が上がっただけ(名目)」なのか、「日本がより多くの価値を生み出した(実質)」なのかを見分けることが大切です。

ここまでの話をまとめると、「誰かが使ったお金」→「誰かの売上」→「誰かの給料」というサイクルが回っているかを確認するためにGDPという指標が必要であり、私たちが本当に注目すべきは、物価高に負けない「実質GDP」の成長というわけです。

5.経済指標を知ることは、自分を守る第1歩

最近のニュースで「日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位になった」「近いうちにインドにも抜かれる」という話題をよく耳にします。

これまでの説明からすると、実質GDPが増えないとお給料も増えないということですので、「日本はもうダメだ」とますます悲観的な気持ちになるかもしれません。

もちろん、GDPが伸び悩む要因には、人口減少や円安、政府の経済政策など、個人ではどうにもできない「国全体の大きな要因」が深く関わっています。1企業が単体で自社の売上を改善し、お給料を上げるのも限界があります。

では、私たちはただニュースを眺めて溜息をつくしかないのでしょうか? いいえ、違います。

国や会社の力だけに頼るのが難しい時代だからこそ、『個の力』で闘える武器を身に着けるためのリスキリングが大事なのです。

幸いにも現代では、2000年代以降にネットが普及し、2020年代以降からはAIなど最新技術を日常生活にも、仕事にも取り入れることができるようになりました。

最新技術を仕事に取り入れることは、限られた時間でより大きな価値を生み出す(=生産性を高める)ことに直結します。 周囲に惑わされない知識を備え、最新技術を味方につけたリスキリングこそが、自分らしい「『ゆとり』ある人生」を切り拓くことができるのです。

今回は「GDP」を切り口に、ネットやメディアなど一方的に受け取る情報を鵜吞みにするのではなく、自らの目で実態を捉えて、活路を見出すためのリスキリングの重要性をお伝えしました。

次回は、「インフレ・デフレ」をテーマに、その実態と我々が心に留めておくべきことを紹介します。

共に、人生のハンドルを握り直しましょう。